越前若狭発!育てる博物館

レイヤーを重ねることで、見えてくる景色がある。

育てる博物館 (6)油を注がれし者 2. 若狭の春は、椿咲く春です

どうも,岩本鑑糵です.
以下のリンクで,「Googleマイマップ」が開きます.
今回は「ツバキ」「照葉樹林」のレイヤーをご覧ください.
https://www.google.com/maps/d/edit?mid=1Z3vS3N6hopPD7wOICVAXjNlGwY-8wRU&usp=drive_link


若狭にはもうひとつ,大事な油があります.
それは「椿油」.
現在も高浜町の会社から,髪や肌のお手入れ用として販売されています.


福井県の沿岸部にはタブノキをメインとする照葉樹林が点在していますが,その多くが社叢林として今に残っているものです.
三国の雄島や小浜の若狭姫神社の昼なお暗い鬱蒼とした照葉樹林はどこか妖しくエキゾチックで,そこに神を見た祖先の気持ちは何となく分かるような気がします.
その中の亜高木層を構成するのがツバキの仲間で,三方町の鳥浜貝塚からヤブツバキ製の櫛が出土するなど,古くから利用されていたようです.
参考: https://wakahaku.pref.fukui.lg.jp/exhibition/detail/post-514.php


全国の椿油の産地をプロットしてみると,見事に暖流の影響を受ける沿岸部と重なります.
ざっと,黒潮沿いの足摺岬紀伊半島渥美半島伊豆半島伊豆大島
対馬海流沿いの五島列島島根半島能登半島佐渡島といった地域が挙げられます,
五島うどんには椿油が塗られるそうで,良い香りなんだろうなあ.
そう言えば,「釜山港へ帰れ」にも歌われるように,韓国・釜山の町の花もツバキでしたね.


日本海側は同緯度の太平洋側と比べて,冬場の気温が高い傾向にあります.
それは黒潮が房総半島で本州から離れてしまうのに対し,対馬海流津軽海峡宗谷海峡まで海岸に沿って北上するから.
北陸という字面から寒いイメージがあるかも知れませんが,気温そのものは特にどうってことありません.
実際,タブノキやモチノキの北限は,山形県沖の飛島だとされています.


日本海の冬を特徴づけるもの,それは「湿気」です.
僕は福井を離れて京都の大学に行くまで,加湿器というものを見たことがありませんでした...
暖流が流れているからこそ,冬場に盛んに蒸発して,山沿いに大雪が降るのです.
暖流に乗ってやってきた南方由来の植物たちは,雪にさぞ面食らったことでしょう.
しかしどっこい彼らは根を張って,土地の人に恵みを与えてくれています.